鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

「すみません、あの、わたし、このあと用事が——」
「昔、俺と会ったこと……いや、ないよな。さすがに。すまん、忘れてくれ」


 わたしが口を開くのと同時に、岩瀬先輩もなにか言っていて。


 えぇっ、ちょっと待って。

 なんて言ったのか、よく聞こえなかったんですけど。


 よく聞こえなかったはずなのに……なぜか心臓の鼓動が速くなる。


「す、すみません、岩瀬先輩。今、なんて言いました?」

 震えそうになる声を必死にこらえて、岩瀬先輩に問い返す。

「だから、忘れてくれと言ったんだ」

 わたしの方をチラッと見ると、バツの悪そうな顔をした岩瀬先輩がふいっと顔をそらす。

「そ、その前です」

「だから、もういいと言ってるだろ」


 そうじゃなくて!

 もう一回言ってくださいってば!


 だって、わたしが絶対に聞き逃しちゃいけないなにかを言ってたような気がするんだもん。


「あのっ……実はわたし、昔、わたしよりも少しだけ年上っぽい男の子に助けてもらったことがあるんです。な、名前も知らなくて、もう二度と会えないって思っていたんですけど……」


 わたしの顔をまじまじと見ていた岩瀬先輩の目が、だんだんと大きく見開かれる。


 ひょっとして、そう、なんですか?