「も、も~、奥森くんからかわないで~!!」
私は奥森くんの頭を、ポカポカ叩く。
「ごめんごめん、でも佳乃愛さんには笑顔でいてくれた方が嬉しいから」
「奥森くん……」
「佳乃愛さんは、佳乃愛さんらしく自由に生きて? それで好きな人と結ばれて幸せになってほしい」
奥森くんは、キッパリと言い切った。
私は、おずおずと奥森くんの方を見て。
「奥森くん、私を好きになってくれてありがとうっ……」
「うん」
「あの、これからも、“友達”でいてくれる……?」
「うん、もちろんだよ」
奥森くんは笑顔のまま、するっと私の手を離す。
ーーキーンコーンカーンコーン。
「あっ、早く教室に戻らないと! 奥森くん急ごう!!」
「いや、俺、眠いから午後はサボる。佳乃愛さん先、行ってて?」
「えっ、あ、そう? じゃ、じゃあ私行くねっ!!」
扉のバタンと閉まる音と共に、私は奥森くんの前から姿を消した。
奥森くんが屋上でひとり、「さよなら、僕の好きだった人」と呟いていることも知らずにーー。