「ううん、僕も佳乃愛さんに酷いことした」
長い前髪から、チラリと片目だけがわずかに覗いて、切なそうに私を見つめる。
奥森くんは、触れた状態の、私の左手を今度は優しく握ってくれた。
「あの時、俺は周りの目を気にする臆病なヤツで、好きな子ひとりも守れないんだって喪失感に駆られたよ」
ーーえ?
今、奥森くん『好きな子』って言った……?
私はポカンと口を開けていると、奥森くんは真剣な顔つきになる。
「佳乃愛さんは、いつも明るくて自由で、俺の憧れ。そしてーー、好きな女の子でもある」
「好きな……女の子って、私……!!?」
私は思わず目を見開いて、自分を指さした。
「うん、中学に入学してからずっと」
「ずっと……って、3年間も!!?」
「俺、佳乃愛さんに全然コクる勇気でなくて、気づいたらかなり時間、経っちゃった。でも、今日ようやく言えた」
奥森くんは、苦笑いを浮かべながら淡々と述べる。