ーside華乃音ー
私はお姉ちゃんのことを“好き”だと1回も、思ったことがない。
なぜかって?
勉強も運動も、お姉ちゃんは私よりできないし。
しかもお小遣いのほとんどをマンガにつぎ込む、マンガオタク。
おまけに、ちょっと男子にいじめられたからって、簡単に男が苦手になっちゃう。
けど、唯一羨ましく思えたのは、誰の人の目を気にせず自由に、生きていること。
人生を自分のものだと信じて、不器用ながらも明るく生きていること。
本当は悪魔な性格の私を、天使だと信じ込んで疑わないこと。
そしてーー、私を誰よりも一番に可愛がって守ってくれるところ。
全部、全部。
ウザくて、ムカついていてーー。
本当はそんなお姉ちゃんがーー、私はただ、羨ましかったんだと思う。
顔は同じ美人で生まれてきたはずなのに、お姉ちゃんと正反対の生き方しかできない私。
周りの評価ばかり気にしすぎて、息苦しい生き方しかできない私。
私は生まれて16年、「幸せ」「嬉しい」って何度、嘘をつけばいいんだろう。