でも触れていい傷かわからなくて、見なかったふりをして大理石模様の湯桶でお湯をかける。 そして泡をたてて背中を洗いながら、いまだ心を強張らせる緊張を誤魔化すように話を切り出す。 「刺青はどうして入れたんですか?」 「んー、若気の至り、みたいな?」 「へ……」 そんな、軽くピアス開けてみましたくらいのテンションで言われても。 たしかに腕から背骨あたりにかけて入った模様みたいなタトゥーは、ドラマで見たことがあるような虎やドラゴンとはかけ離れた、だいぶ現代的なものだけど。