放課後の片想い

「嬉しい…なんて思えるん?」


「色んな一面が見えたら嬉しくない?」


「自己中でも?」


「あはは。そっ。自己中でも」




桜の言葉が頭をよぎる。



【日和はそんな悠を含めて好きやったんやで?】



もう遅いのかもしれへんけど

それでもやっぱり伝えたい。



困らせるかもしれない

悩ませるかもしれない



でも、俺の事を少しでも考えてくれるんやったら嬉しい…
なんて思ってしまってる自分もいる事に正直引くけど、でもこれが俺やから。



どこまでもわがままで自己中でごめん。



「行かないでってどういう意味?」


日和の表情が一気に曇る。



ほんまはもっと笑った顔が見たいのに


俺はなんで日和にこんな表情ばかりさせてしまうんやろ。



でもさ

どんな表情も愛しいって思ってしまうから、俺は重症なんだ。



「教えて?」


日和が下を向く。



言わなきゃ




「好きやで日和。大好きやから」


俺の事でいっぱいになって。


彗の事なんか考える余裕がないぐらい。




そっと日和の頬に手を添える。


顔をゆっくり上げた日和の表情は、赤くなってて涙目。


やっぱり困らせてる。


だけど

抱きしめたくてたまらない。




「大好き」

どれだけ言っても足りない。



俺の言葉を聞いて、日和の目から涙がこぼれた。


また泣かせてる。



「好きになってごめん」



俺は日和を抱きしめた。




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鈴原くんの大好きという言葉が頭の中をぐるぐる回っている。


今、鈴原くんの腕の中にいる。



「離して…」

「嫌だ。離さない」



こんな時も私の心臓はうるさく鳴る。




「お願い…」


「まだ返事聞けてない。昨日の行かないでの意味を教えて」



それはーー…


「みんなで会えなくなるから…寂しいし…」


「そっか」


抱きしめていた力が弱まって、少し私から離れる鈴原くん。

そして、私をじっと見る。



「慣れるよ。その寂しさは」


どうして、そんな事言うの?
悲しそうな顔で言うの?



「日和の周りにはみんながいるから大丈夫」




ぎゅっ!

無意識に鈴原くんの袖を握っていた。


鈴原くんの人生なんだから
私がとやかく言える権利なんてない

そんなのわかってる



「なんで…」

「なに?」



言っちゃだめ


「いつもそう…」


我慢しなきゃ


「急なんだもん…留学決めた事も海外で生活していく事も…」


「うん」


これ以上言ったら戻れなくなる



「全部自分で決めて…私は……なんなの」



だめだ…



「一緒にいたいって思ってるのは私だけなんだ…って実感しちゃう…」



足立くん、ごめんなさい


足立くんの事は本当に大好きなの


なのに、この気持ちはなに



鈴原くんが離れない




「鈴原くんの…バカ……自分勝手……」


「もっと言って?」



「鈴原くんなんて…きら……」


言葉が詰まる。



「俺なんて?」



バカ、私。





「嫌いになれないよーー……」



鈴原くんはもう一度私を抱きしめてくれた。




このぬくもりを忘れたつもりだったのに



私は全然忘れられてなかったんだ。