順番に電話を変わっていって、最後に私に戻ってきた。
「ありがとうな。みんな喜んでくれて嬉しい」
「うん!お祝いしなきゃね」
「おー。さらに嬉しいわ」
大丈夫。普通に話せてる。
「じゃあ…」
「どこにおるん?」
「今?近くにあるカフェだよ」
「もうちょっと待てる?親と別れたら行くわ」
「えっ!でもせっかく結果も出たし、親御さんたちと一緒に…!」
「ええわ。帰ったらどうせおるし」
いいの…?
「何より会いたいから。待ってて」
そう言って電話は切れた。
私は最後の言葉に応えられなかった。
「悠、なんて?」
「もうちょっとしたらここに来てくれるみたいです」
「そうなんだ。アイツ親とか大丈夫なん?」
「うん、大丈夫みたいです」
絶対忙しいのに、こっちまで来てくれる。
「ほんならみんなで待っとこっか」
桜ちゃん、嬉しそう。
そんな桜ちゃんを見て、私まで嬉しくなる。
ハッとして真穂ちゃんの席を見ると、もういなかった。
会場で結果聞けたかな?
ぎゅっー…
テーブルの下で、足立くんが私の手を握った。
いきなりの事でドキッとした。
「悠、ほんとによかったね」
「そうですね」
私の手を握る足立くんの手から、温かな体温が伝わってくる。
そして、きゅっと力が強くなるたび胸がぎゅっとなるのはなんなんだろう。
30分ほど経っただろうか。
「ごめん!お待たせ!」
鈴原くんがやってきた。
あ、泣きそう。
だめ、絶対だめ。
でも声を出すと泣きそうで…
「悠〜〜〜!!!」
桜ちゃんが泣きながら鈴原くんに抱きついた。
「おわっ!桜!?」
「よぉ頑張ったね!!ほんまにおめでとう!!」
あぁ、こんな風に私も素直に喜ぶ事が出来たら…
「鈴原、おめでとう!ほんとに嬉しい!ただ、今だけだよ、桜と抱き合うのが良いのは」
笑いながら言う加藤くん。
「コイツが勝手に抱きついてきたんやで!?」
鈴原くんの準優勝、みんな本当に喜んでる。
「悠、おめでとう。今度なんか奢ったるわ」
「ほんなら、ステーキ食いたい」
私もちゃんと言葉をかけれるかな。
言いたい事は山ほどあるのに。
「お…おめでとう」
「うん、ありがとう」
どうして、そんな優しい顔をするの?
泣きそうになっちゃう。
悲しい涙じゃないの。
だけど、足立くんに嫌な思いさせちゃうんじゃないかって思ってしまう。
そんな涙を堪える。
私の涙の意味はーー
「みんなでパーティーだね!」
泣かない、絶対に。
「楽しみにしてる」
足立くんに不安な思いをさせたくない。
「そういや、桜のお母さん来てくれてたで」
「嘘!!私に何も言ってへんかったで!」
「そうなん?うちの親と一緒に来てたで」
あっ…
桜ちゃんとの話になっちゃった。
なに、ひとりで考えてるんだろ。
自分がなんだか情けない。
「トイレ行ってくるね」
私はその場から離れたくて、トイレを言い訳にして逃げた。
私、何がしたいの?
意味わかんない。
自分にイライラする。
「あれ…」
トイレから戻ると、鈴原くんはもういなかった。
「悠、先生に挨拶とかあるみたいで先帰るって」
「そうなんですね」
忙しいのに、わざわざ来てくれたんだ。
もっとちゃんとおめでとうを言いたかった。



