放課後の片想い


「悠、ほんますごかったね」

「俺…改めて鈴原の事尊敬したわ」



鈴原くんの音色が頭から離れない。
そしてあの時の震えてた肩…




「やっと見つけた」


少し聞き覚えのある声。

顔を上げると



「あっ!!あんた!!」


桜ちゃんが真っ先にわかった。



「真穂…ちゃん」



なんだか急に鼓動が速くなる。




「日和ちゃん、ちょっとこっち来てくれへん?」


なんだろう


「俺も行く」


隣の足立くんも席を立とうとした。



「女同士喋りたいねん。邪魔せんとってや」


そう言ってヒラヒラと手を振って、歩きだした。



「大丈夫だよ。ちょっと行ってきます」


足立くんはもちろん、桜ちゃんや加藤くんも心配そうな顔をしている。



何の話…なんだろう。。




少し進むと、パンケーキやアイスなどがもりもりのってるテーブルがあった。



「ここ」


やっぱり…


とっても美人な真穂ちゃん。
そして少し憧れてしまうほどの、大食いな真穂ちゃん。



「あなたも何か頼んだら?」


「あっじゃあ…アイスティーを…」


「あとは?」


「今はいいかな」




少し続く沈黙。




「モンブラン好き?」



へ!!??

急になに!?



「…うん、好きだよ」



ピンポーン

真穂ちゃんは店員さんを呼ぶベルを押した。



「モンブランパフェとアイスティーをお願いします」


モンブランパフェ!!


「気になっててんけど食べれるかなぁと思ってて。一緒に食べよ」



「う、うん…」


やっぱり真穂ちゃんは、掴めない。




少しして、アイスティーが運ばれてきた。



沈黙が続く。


真穂ちゃんはずっと食べてる。



「真穂ちゃん…コンクール聴きに来てたの?」


「そうやで。悠くんの応援に」


「そっか」


関西からわざわざ。
すごいなぁ。



カチャンッ

真穂ちゃんは持っていたフォークをお皿の上に置いた。




「ごめんね」

そして聞こえてきたのは、謝罪の言葉。



え??


「前さ、悠くんの家から帰る時あなたが見えて…わざとキスしてん」


あの時の事。。


「別れたらいいって思った。悠くんは私の方が絶対支えられるって思ってたから」



ドクンドクンッ

鼓動が大きく、そして速く鳴る。



「でも、そんなん無理やったわ。あれから連絡あってきっぱりフラれた」

「!!そうなの!?」


「何も聞いてへんの?連絡あってんけど、悠くんはあなたにキスを見られた事を言ってこうへんかってん。私を責める事もまったく」


鈴原くんらしい。


「悠くんらしいよね。ただ、彼女おるのにもう2度とあんな事しないでくれって言われた。そうじゃなかったら私とは今後2度と会わないって」


そこまで…

「だから自分の気持ちを伝えたら、きちんと断ってくれた。なんかスッキリしたんよねー」


私は何て言えばいいのかわからない。


「それでちょっと前に関西のレッスンで会ったら、別れたって聞いて…あなたに会いに来たんよ」


私をまっすぐ見る大きな瞳。


「あたしのせいならごめんなさい。悠くんはほんまにあなたの事を思ってるからー…!」

「真穂ちゃんのせいじゃないよ」


本当に。


「もちろん鈴原くんのせいでもない。私のわがままなの」


「わがままって…別れる事がわがままなん!?」


「付き合ってたら会いたいとか連絡取りたいとか言っちゃいそうになるから。練習頑張って欲しいって、夢を叶えて欲しいって思ってるのに、なんでデート出来ないんだろうとか思っちゃう自分がいたの」


そう、これが本音。



「そんな自分が嫌だった。でも、会えない時間や声が聞けない時間も多いのも嫌だった」


だから、別れた。



「ね?結局自分のわがままなの。鈴原くんの事を考えてって綺麗事を考えたりもしてたけど、ほんとに綺麗事。結局自分の事ばっかり」


あの頃、私ってこんなにわがままで自己中心的で最低なんだって実感した。