「日和、何か部活入ったりしてないん?」

「え!部活?」

考え事に夢中になっていて、ハッと我に帰る。



「そう、部活」

「入ってないよ。1年生の頃から帰宅部」

「そうか。俺と一緒」

「鈴原くんも入ってないの?ピアノで忙しいから?」

「どうかな。中学も部活入ってなかったからその延長かも」


知らなかった鈴原くんの部分の1つを知れた事がすごく嬉しくて、はにかんでしまう。


すると頬をつねられた。

「わぁ!なに、いきなり!」

「なんかつねりたくなった」


つねりたくなった!?
なにそれー!!!

こういう所が桜ちゃんの言う【S】の部分なんだろうか。


全然痛くない。
全然痛くないのに、触れられた頬が熱くてジンジンしてる。


私やっぱりおかしい。



「あ、ここ?」

表札に【前川】とある一軒家。
少し遠いはずなのに、あっという間に家に着いた。


「うん」


もう着いちゃった。
後もう少しだけでも一緒にいれたらいいのに。

でも引き留めたら迷惑だよね。
練習しなきゃだし。

一緒に帰れた事が奇跡なんだから。



「鈴原くん、ありがとう。また学校でね」

「寝坊とかすんなよ」

「しないよ!」

「じゃあ…」


鈴原くんが帰っちゃう。
まだ行かないで…‼︎



「あら、日和」

「お母さん!」

買い物帰りのお母さん。


「今帰り?って、あら?」

お母さんが鈴原くんを見つける。


「まさか。日和、彼氏出来たの??♡」

ニコニコ嬉しそうな笑顔で言うお母さん。


なんて事を!!!


「ちっ!違うよ!!鈴原くんに失礼だよ!!」

「え、別に失礼とか何もないけど」

「あら、じゃあやっぱり彼氏さん?日和がいつもお世話になっています」


だめだ、らちがあかない。


「違うってば!!友達だよ!!!」


一瞬シーンとなり、その静けさを破ったのはやはりお母さん。


「そうなの!!どっちにしても嬉しいー!!時間ある??お茶でもしていってー♡」

マイペースなお母さん。
鈴原くんの気持ちなんておかまいなし。


「お母さん、鈴原くん忙しいしやめて…」

「お邪魔します」


え!!あがるの!!??


「日和、早く入ってお茶出すの手伝ってー」



私ひとりがパニックになってる。