「お嬢様はな、これからコワ〜イ大人たちがたくさんいるオークションにかけられるんだぞ」


「オー……クション……」


「財閥のお嬢様なんて、いったいいくらで売れるんだろうなぁ? 楽しみだ」


スカートから伸びた私の太ももを撫で回す手が気持ち悪くて吐きそうになる。


「やめとけ。これ以上西宮一族を刺激してもいいこなんかねぇぞ」


——ドンっ


次の瞬間、蓮さんは地面に突き飛ばされていた。


「大丈夫ですか⁉︎」


私は蓮さんに駆け寄る。


「ッテェな。何しやがる!」


でも私の静止なんかお構いなしに、蓮さんは男に向かって行く。


男の部下も出てきて、乱闘が始まってしまった。


蓮さんだってこの人たちの仲間のはずなのに、集団で1人にたかるなんて、いくらなんでも卑怯すぎる。


「もうやめさせてください! じゃないと彼が死んじゃいます!」


殴り殴られ、ボロボロになっていく蓮さんを黙って見てはいられなかった。


「離せよオラッ!」


地面に押さえつけられてもなお暴れる蓮さん。


それを見て男は高笑いした。


「蓮。オマエもしかして、このお嬢様に情でも移ったか? ハッ、おもしれぇ。じゃあ悲しいお別れの前に、オマエも一緒に過ごさせてやるよ」


こうして私たち2人は、ホコリとカビと下水の匂いがする地下の一室に閉じ込められた——。