——コンコンコン


ドアをノックする軽やかなこの音で、私の１日は始まる。


「んんっ……はぁぁい」


なんとか声を絞り出して返事をすれば、私のお世話係の綾子さんが部屋の大きなカーテンを容赦なく開けた。


「おはようございます、聖奈(せな)お嬢様。今朝はとてもいいお天気ですよ」


眩しい、メチャ眩しいよー綾子さーん。


一瞬で飛び込んできた外の明るい光に、私は目を細めた。


うん、確かに。これはいい天気。


学校で勉強するだけでは勿体無いほどのお出かけ日和だ。


「おはよぅ綾子さん」


まだ半分夢見心地な私は目をこすりながら綾子さんに挨拶した。


「おはようございます聖奈様。さ、制服はこちらに置いてありますからね。着替えが終わったら降りてきてください。今日は旦那様も一緒に召し上がられますからね」


「はぁーい」


綾子さんは私が生まれる前からうちに住み込みでいてくれるお世話係。


幼い頃に母様を亡くした私にとっては母親的な存在だ。