その時、あなたが声をかけてくれた。


『迷子なのか?』


私は顔を上げたけど、夕日のせいで彼の顔は見えなかった。


唯一ハッキリと覚えているのは、優しそうな笑顔と、首から下げられた十字架のネックレス。


『もう泣くな。俺が一緒にいてやるから』


そう言って手を握ってくれたあなた。


まだ幼かった私にとって、あなたはおとぎ話の王子様そのもので。


だから恋をしてしまったのかもしれない——。