きょろきょろと周囲を見渡していた私が、物知らずな子に思えたのか、すぐ近くに居た男性が声を掛けてきた。

「お嬢さん。もし何かお困り事なら、私にお手伝い出来ることはありますか?」

「いえ……! 大丈夫です」

 いかにも怪しげな誘いに思える厳つい顔をした男性からの言葉を振り切り、私は大きな荷物を持って早足で歩き始めた。

 私を騙して、売り払うつもりかしら……? 絶対に騙されたりしないんだから。

 何故、こんな辺鄙な村に来て、私が人生をやり直そうとしているかというと、理由は簡単。

 ……婚約者が、病弱で可愛い妹に恋をしたから。

 私の妹二歳年下のオレリーは、幼い頃から病弱で、これでは成人は出来ないだろうと医師に告げられた。両親はそれを聞き嘆き悲しみ、私だって悲しかった。

 オレリーが両親の最優先になることだって、あの子の姉として、ちゃんと我慢した。

 ……だって、可哀想なオレリーは、大人になれずに亡くなると宣告されている。生きている間、あの子が常に幸せであるように願っていた。