雨に濡れて私を助けに来た、お兄ちゃん達。
 手には武器も何もない。
 
「リーダー! 指示した通り、二人の剣は三角公園で発見した! 回収するぞ!」

「ははは! よし! これで俺等の勝ちだぁ! 秘宝の剣さえなくなりゃ!!」

「二人共! 来ちゃダメ!」

 二人の周りに武器を持った男達が取り囲んだ……。
 嘘……まさかこのまま、二人に何かするつもり!?

 でも二人は、男達に見向きもしてない……。
 二人が見てるのは、私。

「僕のルウちゃんを……土の上で……」

「俺のルウを……縛り上げただと……」

 お兄ちゃん二人の姿が、ゆら~~~って揺らいだ。
 波のように……揺れてるのは二人の怒りのオーラ。

「おい! 動くんじゃねーぞ!? 俺達に手を出したら……この妹が……っ!」

 リーダーと呼ばれた男が、私の首にナイフを突きつける。
 その瞬間、大地が揺らいだ――!

 聖お兄ちゃんの綺麗な青い瞳が、新星のように白く輝いて爆発したような衝撃だった。

「許さないよお前たち……ハート・サスペンド」

 小さく呟いた聖お兄ちゃんの声は、いつもの優しい声じゃない。
 冷たい……怒りに燃えた声。
 
 男達がみんな停止した。
 雨塚君も……停まってる。

 破れた屋根から落ちてきていた、雨の雫すらも停まってる。
 
 私はこの聖魔術は知っている……本当は有機物に効く聖魔術だ。
 聖お兄ちゃんは料理をしながら、全ての有機物を管理する能力を研ぎ澄ましているの……!
 でも聖お兄ちゃんほどの天使だと、雨も時間も管理して停めることができるの……!?
 
「あぁ……絶対に許される事じゃねぇ……絶対にな……」

 次は、暗黒お兄ちゃん!!
 お兄ちゃんの身体から、真っ黒な炎が燃え上がる。
 一瞬でその炎は、無数の矢のように形を変えた。

 まるで黒い龍!
 金色の瞳が見開かれた……一瞬で全てを消し去る大悪魔の睨み……!

「全てを貫き破壊しろ!! ダークライトニング……スピア!! 」 

 そうだ……二人には剣なんかいらないんだ。
 
 あの剣は、逆に二人の力を縛って抑えさせているようなものだったんだ!