大学の校門で、落ち合った聖と暗黒。
 近くの駐車場に車を停めてある。
 真っ黒な雲に覆われた空からは、激しい雨が降り注いでいた。
 
 聖が用意していた傘に、二人で入る。
 
「くっそ、雨か~……冷えるな」

「ルウちゃんはカーディガン持っていかなかったね。あの塾は冷暖房もしっかりしているけれど、早めに待ってすぐに車に乗れるようにしよう」

「んだな。聖、今日の夕飯は?」

「あったまるポトフにしようか」

「いいな。ルゥの好きなライ麦パンも買って帰るか。ん……聖……感じるか? ……風が生ぐせぇ」

「……あぁ。わかるよ……この一帯の結界に不備はないと思うんだけど……不穏な気配を感じる時がある」

 二人が生活するこの街は、特別区域として結界が張られている。
 しかしその管理をする余裕は、二人にはない。
 基本的には、彼らの部下が見回りをしており結界破損の報告は受けていないのだが……。

「ルウちゃんの塾からは、到着のお知らせはきてるよね?」

「もちろんだ。本当は毎度電話での確認もしたいし、GPSで居場所も逐一知りてぇのになぁ」

「うん。本当は綺麗な花園にでもずっと……閉じ込めておきたいよね……」

「それな! 俺達だけの世界に」

 ルウの無事を毎度確認するためにGPSで居場所を特定できるように兄二人は望んだが、ルウは『なんかやだ~』と言って許可しなかった。
 塾や他の習い事では、到着時と帰宅時に保護者へメールがいくようになっている。
 今日も当然、塾からメールが来た。

「でも時間を少し過ぎているのが、少し気になる」

「確かにな。ルウは15分前には塾に入るし……」

 二人の心に何か嫌な予感が過ぎる。
 そして、塾終了時間前に見つけた塾のドアに貼られたお知らせ……。

「なんだって……塾が休み?」

「……中には人の気配はないね……」

 その時、暗黒のスマホが鳴った。
 相手はルウだ。

「ルウ!? お前どこに……!」

『お前の妹は預かった』
 
 激しい雷が、街に鳴り響く。