今日は不思議に、雨塚君のあとをついてくる女の子はいなかった。
 好きな女の子がいるから? でもそういうの関係ない子もいるのにな……。

 不思議。
 でも、私はまた動物の話をしながら楽しく歩く。
 雨塚君と一緒に帰って、そのまま塾へ……って思ってたんだけど。

 駅前の下校道沿いにある塾。
 
「えっ……急遽、お休み?」

 突然に塾がお休みになっちゃった。
 先生が急病!?

 本当に突然だったらしく、塾の入口に紙が貼ってあった。

 こんなの初めてだけど……。

 中学生以上の塾だから、みんな対処できるって思うから……?
 仕方ないよね。

「ルウちゃんどうしたの? あ、塾がお休みになっちゃったんだ」

「うん……そうみたい」

 一度バイバイしたけど、私の驚く声を聞いて雨塚君が戻ってきた。
 
「家に帰る?」
 
「そうだよね……って! あ~~~!! 私、今日家の鍵がない!」

 うっかりしてた!
 お兄ちゃんに送り迎えを甘えちゃってて……私のバカ!

 しかもポツポツと冷たい雨が……。
 うう……駅の中で待つのも寒そう。
 でも、そうするしかないよね。
 お兄ちゃんに連絡したら、すぐ来るかもしれないけど……迷惑かけたくない。
 いつも私を優先してくれるから……できる限り、自分で解決できることは自分でしたいの。

「お兄さんに連絡は?」

「……なんとか、時間つぶそうかな」

 雨は急にひどくなってきて、私と雨塚君は塾の建物の軒先に入った。

「雨がひどいね。じゃあさ、僕の家に来ない?」

「えっ……?」

「塾が終わって、お兄ちゃんが迎えに来るまで僕の家にいればいいよ。あったかいコーヒーでも一緒に飲もう」

「でも……」

「緊急事態だし、仕方ないじゃない? 僕の可愛い家族を見に来てよ」

 家族……イグアナちゃん達の事だよね。
 優しい雨塚君の微笑み。