「げっ……! 暗黒(アンク)兄ちゃん……」

「あ~~ん?」

 後ろから現れたのは、胸元を開けた黒いシャツの男の人。
 黒い眺めの髪に、ピアスをじゃらじゃら付けた耳。
 瞳は金色なの。トパーズみたい。

 顔は聖お兄ちゃんそっくりなのに、まるで正反対。
 
「げっとはなんだ? げっとは? ……このひよこちゃんが……生意気だなぁ?」

 そう言いながら私は、ほっぺたを長い指でつままれた。
 
「む、むにゅ~~! やん! ひよこ口にしないで!! 今帰ってきたの~~?」

「そーだけど?」

「朝帰り!」

「そーですがぁ?」

 悪びれもしない……!
 でもこの暗黒兄ちゃんも……聖お兄ちゃんと同じ成績超優秀なの。
 ペロッと出した舌にピアスが光る。

「なにか文句あるかなぁ~? うりうり~ひよこちゃん♪ 赤ちゃんには朝帰りなんかできないね♪」

 暗黒お兄ちゃんはぁ~意地悪なの!
 いっつも私のほっぺたをいじってくるし、子供あつかいする。

「自分だって、そんな大人じゃないくせに!」

「なんだと! よく言った! いい度胸だ!」

「むにゅ~~~!! か、顔洗ってからにして~!」

 二人で猫の喧嘩みたいに、ぐるぐる猫パンチしたりしながらリビングのソファへ。
 最後には、暗黒兄ちゃんにハグハグ抱っこされる。

「こらこら、朝ご飯前なのに……暗黒(アンク)おかえり」

「ただいま(ひじり)。こいつがあんまり可愛いからさ」

 抱っこされながら、ほっぺたにキスされる。
 そう、意地悪なんだけど……なんだかんだで優しくって、最後はハグとちゅうで溺愛されちゃう。

「ずるいな。独り占めは無しだよ」

 聖お兄ちゃんがソファまで来てくれて、暗黒お兄ちゃんの腕から解放してくれた。

「可愛い瑠兎(るう)ちゃん、改めておはよう」

「うん、聖お兄ちゃん……おはよ」

 聖お兄ちゃんからも、逆のほっぺたにちゅーされた。

「じゃあ、三人でブランチを食べよう」

「うん!」

「いいね」

 私達は仲の良すぎる兄妹なのです。
 双子のお兄ちゃんズは正反対の性格なのに、私を溺愛してくれる優しいお兄ちゃん。
 そんなお兄ちゃん達は……。

「暗黒、どうだった魔界は?」

「あぁ。朝方までチーム引っ張って、違反者を総潰ししてきたぜ……イクロスなんとかって雑魚」

「魔界は大変だなぁ。まぁ天界もちょっと騒動があってさ」

 実は天使と悪魔なのです。