「雨塚君、すごい人気だね」

 綺麗な顔で長身の転校生、雨塚君。
 ミナコちゃんの心配なんていらなかったくらい、彼の周りは人でいっぱいだ。
 
 雨塚君が微笑むたびに、女の子達がキャッキャ叫んでる。

 聖お兄ちゃんも微笑んだら、あんな感じで女の子達が悲鳴あげるもんね~。
 暗黒お兄ちゃんは、女の子にも塩対応するけど……またそれでみんなキャーン! って悲鳴をあげる。

「みんな、ちょっとごめん」

 ん? 雨塚君がこっちへ来る。

「紗倉さん」

 雨塚君が……私の机に来て……私を呼んだ。
 紗倉って私の苗字。
 
「えっ!? 委員長はミナコちゃんだよ?」

「委員長? 僕は君に用事があったんだ」

「私……?」

 私が委員長かと勘違いしたかと思ったんだけど……雨塚君が微笑む。

「図々しいお願いなんだけど……今日の放課後に、この街を案内してほしいなと思ったんだ」

「えー? ルウに?」

 ミナコちゃんが驚く声をあげた。
 周りのみんなもザワザワしてる。
 私もびっくり。

「私? ……どうして?」

「実はね、僕の家は君の家のすぐ近くみたいなんだ」

「私の家を知ってるの?」

「あんなに大きな屋敷なんだもの。つい気になって先生に聞いちゃったんだ。そしたら君の家だってね」

 個人情報~って思ったけど、クラスの男子にも『紗倉御殿』って言われちゃってるし……。
 なんか恥ずかしい。

「じゃあ少し遠いんだね」

「そうなんだ。でも駅前も通るし、いいかなってね」

「そっか。駅前のクレープ屋さん美味しいよ。あっ……下校時間に食べたらダメだけどね」

「クスッ……いいね。そういう事教えてほしいな」

「でも二人きりじゃあ……」

 お兄ちゃん達に怒られちゃう?
 でも……クラスメイトだしな。