ドロ痛α様に狙われて


 「……痛っ」


 私の首に尖った歯が食い込んだ。

 今のはただの甘噛みか……と、安心したものの。

 甘噛みだけでこんなに痛いんだ。

 今から襲われるであろう本激痛を想像して、顔を歪めずにはいられない。


 絢人先生がオメガの私を噛めば……

 私達の間に番関係が結ばれれば……

 普段の優しい先生に戻ってくれると思うけど……


 大事にしたかったな、私の初恋を。

 東条くんに伝えたかったな、心の中に生まれてしまった恋心を。



 いつ痛みが走っても堪えられるように、思いきりこぶしを握りしめる。

 椅子に座ったまま覚悟を決め、私は目を強くつぶった。


 絢人先生の生暖かい吐息が、私の首筋に絡みついてくる。

 私の鼓膜を震えさせる、上下の歯がこすり合う不快音。

 脳に恐怖を塗りつけてくるから、冷や汗が首筋を伝わずにはいられない。