……って。
この匂いは嗅ぎ覚えがある。
何度もある。
ヒートの時に、私が放ってしまう香りだ。
ということは……
普段は薬で抑え込んでいるオメガフェロモンが、私から大量に放出されているんだ。
待って。
なんで?
どうして?
3か月に1回来るヒートは、まだ先のはず。
薬だって1日3回、ちゃんと飲……
のっ、飲んでない!
お弁当を食べていないから、お昼分の薬はまだバックの中だし。
思い返せば、今朝も口に放り込んだ記憶がない。
朝食後に飲むはずの薬は、自宅のダイニングテーブルの上に今も置きっぱなしだろう。
頭の中が東条くんのことでいっぱいで、服用義務のあるオメガ薬を飲み忘れていたんだ。
先生、肩を掴まないで。
私を解放して。
お願い!
「……首を……噛ませろ」
普段の絢人先生は、死んだような目でかすれ声なんかこぼしたりしないのに……
「……オマエは……俺のものだ」
生徒のことをオマエ呼びもしないし。
「やめて」と肩を揺らして暴れる私の首に、無理やり歯を立てたりもしないのに。



