ドロ痛α様に狙われて


 私の目の前には、緑色のネクタイが揺れる胸が。

 横には白衣に袖を通した腕。

 真上には、真っ白な歯を光らせた絢人先生の顔。

 私はコロ椅子にお尻を鎮めたまま、恐怖で肩を震わすことしかできない。


 オメガフェロモンを吸い込み過ぎたアルファは、人格が変わってしまうのか。

 人としての良心が食い荒らされ、悪を植え付けてられてしまうのかもしれない。

 
 絢人先生はもう、全くの別人になりかわっていて。

 殺人鬼のようなネチネチした表情でニヤリ。

 私の両肩を掴むと、私の耳裏に唇をうずめてきた。

 今度は前歯を立て、私の首筋にくいこませ、鎖骨に向かって下にずらしてくる。


 「待ってよ、先生!」

 「……」

 「お願いだからやめて!」


 今すぐ私から離れて!

 いつもの優しい先生に戻って!


 フェロモンに惑わされて私を噛んだら、絢人先生は後悔することになる。

 私の首に、生徒に手を出した証拠が残ってしまうし。

 先生として許されない行為として、教員免許のはく奪だってありえるんだよ。


 それに、好きでもない私と(つが)ってしまうなんて……


 私だってこんなの嫌だよ。

 オメガの私は、一生に1人のアルファとしか番えないの。

 噛み跡を私の首に刻む相手とは、相思相愛がいいの。