ドロ痛α様に狙われて


 椅子に座ったまま、体も脳もフリーズしてしまった私。

 理科準備室にいてはダメと気づいた時にはすでに遅し。


 プチっ、プチっ!

 部屋に響いたのは、ホックが外れる不快音で。

 バサッ!

 私の足元に落ちたのは、黒いくて横長な布で。


 あれ? この布は……

 サッーと血の気が引いていき、私は慌てて自分の首をさする。


 あらわになったのは、オメガの急所。

 他人に私の首を晒してしまったのは、十何年ぶり。


 床に落ちているのは、間違いなく黒くて太いチョーカーで。

 私が陥っているのは、アルファに首を噛まれてもおかしくない危機的状況で。


 逃げなきゃ!

 
 身の危険を察知したにもかかわらず、足に力が入らない。

 焦る私よりも早く、絢人先生が椅子から立ち上がってしまったんだ。


 捕まえたと言わんばかりの物欲しげな顔で、私が座る椅子の背もたれを前から両手で掴んでいる。

 コロ椅子に腰かけたままの私は、どこにも逃げ場がない。