今まで私は、先生に安心感を抱いていた。
先生と生徒の一線を越える人では、絶対にない。
物腰の柔らかさと誠実な言動から、先生への防御を緩めていた。
でも今は違う。
安心感は逃げ去り、危機感だけがひしひしと募っていく。
目の前にいる絢人先生は、間違いなくオスのアルファだ。
換気もしていない狭い部屋。
微量ではあるもののオメガフェロモンをこぼしてしまう私と、アルファの絢人先生の二人だけ。
先生はまるで、私のオメガフェロモンに惑わされているかのよう。
「あなたが他のアルファと番う前に、首に噛み跡を刻んでもよろしいですか?」
一切笑みのない表情で私に囁いてきた。
私の脳は戸惑いの闇にいざなわれ。
先生が発した言葉の意味を、なかなか理解できないでいる。



