絢人先生は、寂しそうな顔で私の肩から手を離した。
「人間はなぜ、肩書というものをこの世に生み出してしまったのでしょうね……」
眉をハの字に下げ、はぁ~と重いため息をはきだしている。
「生徒と先生という関係性が存在しなければ、私も東条くんたちのように、思う存分愛でることができるのに」
絢人先生の切な声に戸惑い揺れる、私のポニーテール。
なぜ余裕のある大人が見せる悲しみの表情は、見る人の心を痛めつけてくるんだろう。
罪悪感に襲われた時のような胸の痛み。
私を見つめる先生の瞳が、憂いさを含んでいるせいかもしれない。
スーッと近づいてきた綺麗な指を拒むこともできず、私はただただ固まってしまう。
……えっ?
私の頬に沈みこんだ、温かい手のひら。
感触を確かめるように、指の腹がゆっくりと私の唇を滑っていく。
私の体は、瞬きさえできないくらいの硬直化。
それは身の危険を察知した証。



