ここは理科準備室だ。
あっちゃん、ノックもせずにいきなり引き戸を開けちゃった。
「あっ、いたいた。ハロー絢人先生。お昼休みに急に来ちゃってごめんね」
縦長の部屋。
机が向かい合わせで並んでいる。
中にいたのは、白衣を着た絢人先生ひとりだけ。
椅子に座りながら、眼鏡の奥のおっとり目をキョトンと転がしている。
相変わらず、佇まいが優雅で紳士だな。
「茜さんと歌夜さんじゃないですか」
流れるように椅子から立ち上がった絢人先生。
スラっと伸びた長い足を白衣から出し、私たちのいるドアに歩みを進めている。
「二人ともどうしました? 授業でわからないところがありましたか?」
人生で一度も、人を憎んだことがありません。
そう言われたら納得してしまうほど、絢人先生の微笑みには柔らかさが溶けている。



