なんで私のハートは、こんなにもワガママなんだろう。

 湧き出る身勝手な感情に、顔を歪めずにはいられない。


 旧校舎には入っちゃダメ。

 授業はさぼっちゃダメ。

 頭ではわかってる。

 ……はずなのに、つい願ってしまうんだ。


 東条くんと、もっと話していたいな。

 二人だけで。

 誰にも邪魔されない場所で。


 もちろん、この旧校舎の音楽室でもいい。

 東条くんのことが知れるなら、大嫌いなピアノが私の瞳に映っても構わない。


 だからせめて、放課後になるまでここで……

 なんてダメだよね?


 人に甘えるのが苦手な私。

 おねだりの仕方すらわからなくて

「……先に行くね」

 荒ぶったまま跳ね続けるハートをごまかすように東条くんに笑顔を向け、逃げるように音楽室から飛び出した。