ドロ痛α様に狙われて


 ……っ、これって恋人繋ぎだよ。


 抱きしめられている時よりも、私のハートは確実にざわついている。

 外にいる後輩ちゃんたちには、つないだ手は見えていないけど。

 廊下にいる同級生たちには、バレているの。

 遠巻きで見ている総長様ファンの子たちの瞳に、はっきりと映っているの。


「東条先輩って、歌夜先輩のことほんと好きですよね」


 違うの、違うの。

 彼はただ、私のオメガフェロモンに惑わされているだけなの。



 さっきまで私に見せていた俺様スマイルは、どこえやら。


「好きって言葉、薄っぺらくて俺は大嫌いなんだけど」


 東条くんは不機嫌に眉を吊り上げると

 
「この女にズブってんだよ、完全に」


 後輩たちに見せびらかすよう。

 恋人繋ぎ状態の私たちの手を、肩辺りまで引っぱり上げてしまった。

 窓の外からは、『キャー!』『素敵!』の大合唱。