ドロ痛α様に狙われて


 はっきりと気づいた自分の異変。

 今まで異性にここまで、ハートをかき乱されたことがなかった私。

 名前が付けられない未知の感情に支配され、心臓がくすぐったい。


 自分がどうなっちゃうかわからない不安と危機感。

 相まって怖くなって、勇気を出してスルッ。

 東条君の腕の中から、逃げ出すことに成功した。


 ……はずだったんだけど。


「フフ」


 妙に自信たっぷりの鼻笑いの後、スッとゴツゴツした手が伸びてきて。


「幼稚園児のままごとレベルだから、これなら許すよな?」


 東条くんが握りしめたのは、私の手のひら。

 どうやら私は、また彼に捕まってしまったらしい。


「恥ずかしがり屋の歌夜のために、後輩たちにバレないようにしてやる」


 やけに楽しそうに、東条君は私の耳に甘声をこぼしたと思ったら……

 私の指と指の間に、ゴツゴツした指を強引に入れ込んで握りしめてきた。