ドロ痛α様に狙われて



 私の顔をイタズラっぽくくすぐるのは、優雅に波打つ漆黒の髪。

 この状況を確認しようと、反射的に顔を上げてしまったのがいけなかったらしい。


 うわっ! 

 イ、イイっ、イケメンすぎ……


 まるで東条くんは、世界中の女性を虜にする勇ましい騎士のよう。

 人間国宝級の顔面偏差値の高さに、私のハートも無事では済まされず。

 赤みがかった凛とした瞳が、まっすぐに私だけを捕らえてきて。

 絡みつく視線は、私の瞳を焦がしそうなほどの高温熱量。


 彼に対して恋愛感情は微塵もないはずなのに、なぜかな?

 心臓のバクバクが止められない。

 視線のほどき方がわからなくなっちゃった。


「ととととっ東条君、やめて……こういうの……」


 テンパって過呼吸になっちゃう。

 私が倒れる前にバックハグから解放してよ。

 とりあえず離れて! お願いだから……