ドロ痛α様に狙われて


 眼光鋭く、東条くんに睨まれているのだろうか。

 窓の外では後輩ちゃんたちが、青ざめた表情でウンウン頷いていて


「かっかかっ、カヤ先輩と東条先輩はお似合いだと……わわっ私は思ってます……はい……」

「だよねだよね……」

「おっ俺もそう思ってました! ほんとです! 信じてください!」


 春風に漂うのは、後輩たちの焦り声ばかり。

 東条くんは「それならならいい」と、声を和らげたのに


「はぁ~。このオメガは俺を無視かよ」


 私の鼓膜を惑わすように吹きかけてきたのは、ため息交じりのワイルドボイス。


「歌夜、こっち見ろ!」


 いきなり後ろから、男らしい両腕が私の首に巻き付いてきて。


「……ひゃっ!」


 いつの間にか私はバックハグ状態に。

 私の背中にピタリ。

 鍛えられた東条くんの胸板が、隙間なく押し当てられている。