ドロ痛α様に狙われて


  
 憎しみしか含んでいない溜息を、窓の外の陽だまりに溶かす。

 罪悪感で、目線が下がりはじめていた時だった。


「俺の女の脳に、他の男の名を刷りこんで欲しくないんだけど」


 突然私の背中に突き刺さった、低い俺様声。

 驚いた私は、ビクッと肩を跳ね視線を上げた。


「俺以外にいないよな? 歌夜(かや)にふさわしい男」


 苛立ち混じりの低音ボイスの主が誰なのか、振り返らなくてもわかってしまう自分が怖い。


 今言ったよね? 俺の女って。

 付き合っているわけじゃない。

 告白されたこともない。

 それなのになぜ、ワイルドで甘いセリフをこぼしちゃうかなぁ……


 私の後ろで腕組み仁王立ちをしているであろうお方は、野いちご学園の生徒会長。

 暴走族を束ねる俺様総長。

 私と同じ高3の東条 朝都(とうじょう あさと)くん。