今はお父さんとの離婚が成立している。
だからもう私の母親ではない。
再婚して、新しい夫と私と同い年の女子の3人で暮らしているらしい。
いま思い出すと、ほんと酷かったなぁ。
お母さんの娘になった子が、ピアノコンクールでいつも最優秀賞を取っていた子だと知った時の、私の荒れ具合。
『優秀なアルファとオメガの私を比較しないでよ!』
『私より出来がいい子を娘にしたかったの? だから私を捨てたの?』
『オメガの私を産み落としたのはお母さんのくせに。無責任すぎなんだよ!』
家族にバレないように布団にもぐり。
怒りをこぶしに込め、布団を叩いては泣いてばかり。
それから私は、ピアノが大嫌いになった。
弾くのもイヤ、聞くのもイヤ。
瞳に映るのでさえ耐えられない、かなりの重症度。
母親の憎しみがしみこんだピアノは、家から排除してもらったけれど。
さすがに授業中をさぼることはできなくて。
音楽の時間は生意気で可愛いすぎる弟を思い出し、心の痛みをごまかしている。



