ドロ痛α様に狙われて


 瞳を陰らせ、首元の太いチョーカーを指でさすってみた。

 これはオメガの必需品。

 理性を飛ばして野獣化したアルファに首を噛まれ、間違って(つが)わないための護身グッズ。


 私がオメガじゃなかったら、こんな目立つ物をつける必要もないのに。

 ヒート期間に家に閉じこもる必要もなく、思い切り自分の夢を追いかけられるのに。

 お母さんに捨てられることだって……


 無性にチョーカーを引きちぎりたくなった。

「こんなもの!」って、地面に投げつけたくなった。


 闇まみれの怒りの衝動に、たびたび駆られてしまう私。

 オメガの血が流れる母親のことを、今でも憎んでいる証拠だろうな。



「カヤ先輩」


 ん?


「聞いてました? いまの話」


 そういえば私、廊下の窓から外を眺めていたんだ。

 中庭にいた後輩ちゃんたちが、窓際まで集まってくれていたんだった。