ドロ痛α様に狙われて


 東条くんがギュっと力を込めて、私の手を握ってくれたのに。

 胸キュンに襲われっぱなしで、言葉を紡ぐ余裕すらない。

 これで伝わってくれるといいな。

 ギュっと手を握り返す行為に、「大好き」の想いを溶かす。


 私の心臓をさらに甘く溶かしたのは、東条くんの落ち着きがあるワイルドボイスだった。


「俺が初めて歌夜を見たのは、中2の時」

「私たち、中学が違うのにどこで?」


 落ち着いたトーンで、私は疑問符を飛ばす。


「ピアノのコンクールの予選会」

「東条くんもピアノコンクールに出てたの?」

「俺じゃない、友達。もう一度ピアニストになる夢を追いかけたいって言って、俺らのグループから抜けたヤツがいたんだ。そいつの晴れ舞台を見に行っただけ」

「ピアノを弾く私を、客席から見てたの?」