「大丈夫。君には俺がいる」
「え?」
「アイツより俺のほうが、相当いい男だと思わないか?」

 冗談めかしてキメ顔をする佑利さんがおかしくて、フフッと笑い声が漏れた。
 私を慰めようとして、わざとそんなふうに茶化してくれた彼のやさしさが心に沁みる。

「そうですね。私、佑利さん以上にパーフェクトな男性は知りません」

 御曹司でイケメンで高身長でスタイル抜群。
 加えて、大人で紳士的で、性格までいいとなると非の打ち所がない。
 それに、彼と諒太では圧倒的に違う部分がある。

 私の知る限り、佑利さんは実直だ。
 これまでは仕事の面でしか付き合いがなくて気づきにくかったけれど、彼は真っすぐ私にだけ気持ちを向けてくれていると今は思える。

「どうしたんですか? 顔が固まってますけど……」

 ポカンとしたまま私を見つける彼に声をかけると、我に返ったように表情をゆるめた。

「いや……今のはさすがに照れた。好きな女性から褒められるとね……」

 佑利さんみたいなイケメンでも照れたりするらしい。
 彼の口から“好きな女性”というワードがサラリと出たことに今さら気づき、今度は私が意識して顔が熱くなる。

 タクシーが自宅の前に到着し、車を降りて私を見送ってくれる佑利さんに深く腰を折って頭を下げた。

「送ってくださり、ありがとうございました」

 にこりと笑った彼が私の肩にそっと手を添える。

「今度ふたりで食事に行こう。パーフェクトな俺がエスコートするから」
「ふふ。……はい」

 ホテルのロビーで諒太と鉢合わせして誤解された傷なんて、このときにはもうほとんどなくなっていた。
 それくらい、佑利さんには不思議な力がある。本当に素敵な人だ。