「俺たちに二度と関わるな」

 佑利さんが私の手を引いて諒太の隣をすり抜ける。
 前だけを見て、後ろは振り返らなかった。
 正面出口を出たところに停まっていたタクシーへ無言のままふたりで素早く乗り込む。

「あの……ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

 しばらくして車窓を眺めていた佑利さんに話しかけると、こちらを向いた彼が苦笑いのような笑みを浮かべた。

「さっきの人、元カレなんです」
「そんな気がしてた」
「やり直したいって言ってきてたのに……」

 まだ頭の中が混乱している。あれはなんだったのか、と。
 先ほどの女性と付き合っていて、その上私とも復縁したら、それこそ二股になる。
 それを承知で誘ってきていたのか、はたまたあの女性ともはっきり付き合ってはいないのか。
 どちらにせよ諒太が最低であることに変わりない。

「ショック?」
「……正直、気分はよくないですね。雑に扱われたので。私のことはそんなに好きでもなかったんでしょう」

 諒太はきっと、遊べたら誰でもよかったのだと思う。
 あの女性でも、私でも、まったく別のほかの誰かでも。

 私を心から好きで大事に思うなら軽い扱いはできないはずだ。二股交際なんてなおさら。
 私の性格上、復縁してもそれがバレたら絶対にまた破局すると諒太はわかっていただろうに。
 だから、元々それくらいの愛情しか持ち合わせていなかったのだ。
 もしくは私が二股に気づかない女だと高をくくってバカにしていたか。