私には、ある、悩み事があった。
「鈴華、これ、読んでみてよ!」
友達から差し出されたのは、恋愛漫画。
「小説なら、わかるけど、漫画は、持ってきちゃ、だめでしょ」
恋が分からない。
「鈴華に、このときめきを分かってほしいんだよ!」
「また、読んでみるね。だから、それは持って帰って」
皆、恋愛漫画や小説に映画。実際に好きな人が出来て、告白して、付き合ったり、振られたり。
恋がどんな感情なのか、私には、疎遠すぎる。
でも、知りたいから、私も恋愛漫画とか小説も読んでるし、映画も観たりしてる。
だけど、未だに恋が何かは分からない。
「そろそろ、お昼食べるから」
「いつもの屋上?」
「うん」
「今日は一緒に行けないけど、一人で平気?」
「大丈夫。いってくる」
私は、お弁当を持って教室を出た。
最近、屋上で弁当を食べて、小説を読む事が日課になった。
私は階段を駆け上がり、屋上のドアを開けた。
暖かな日差しとそよ風が私を出迎える。
やっぱり、ここは、誰も来なくて、静かで、いいな。
私は、弁当をたいらげて、小説を開いた。
昨日の続きから。
「何、読んでるの?」
「えっ?」
声をかけられて、顔を上げたら、男子生徒が目の前に居た。
「何、読んでるの?」
顔が近いから、吐息もかかってきた。
私、息、止まってるかも。
「とりあえず、近いです」
「あっ、ごめんね」と下がってくれた。
「俺、遥斗。風宮遥斗」
「立川鈴華です」
「立川さんか。俺は遥斗でいいから」
「分かりました」
「月の夜は、という本を読んでました」
「恋愛小説、好きなの?」
「何で、恋愛小説って分かったんですか?」
「タイトル、聞いた事、あったから」
と本を見つめる遥斗さん。
「よかったら、読みます?」
「いいの?」
「はい。昼休みはここに居るので読み終わったら、持って来てください」
「ありがとう」
そして、昼休みの終わりの予鈴が鳴った。
「授業、始まるね。じゃ、また」
「はい。また」
私は遥斗さんと別れ、授業に向かった。