その先輩に生徒会室まで送ってもらうことになった。

「俺、清瀬(きよせ)空っていうんだ。一応、この学校の生徒会長やってる」

「ぇ、」

清瀬空、生徒会長。

結衣ちゃんが言っていた、空先輩じゃないだろうか。

こんなにすぐ会えるとは思わなかった。

「あ、もしかして、俺のこと知ってた?」

空先輩が茶目っ気のある顔で笑う。

「海先輩の弟、ですよね、?」

よく見てみれば、整った鼻梁や小さな顔、スタイルの良さは、海先輩とそっくりかもしれない。

でも顔の造りはそこまで似ていない。

「え、もしかして海と知り合い?」

「全然っ、知り合いって程じゃ、ないです」

助けてもらっただけだ。

相手は私のことなんてすぐに忘れるだろう。

「今朝、助けて貰ったんです」

「へぇ~、あの海が人助けしたんだ。珍しいこともあるんだね」

悪意があるとか、そういう雰囲気じゃない。

ただ純粋に、海先輩が人助けをしたことに驚いているようだ。

「あ、ここが生徒会室だよ。で、なんの用なんだっけ?」

高級そうな木の扉が見える。

「山本先生に頼まれてこれを届けに来ました」

分厚いファイルを空先輩に手渡す。

「ありがとう。教室には帰れる?」

さすがに帰りまで送ってもらうわけにはいかない。

「帰れます!ありがとうございました」

「じゃあね」