眠れない夜など、ここへ来てからは滅多にない。
 ただ、あまりにも星が綺麗なので、ずっと見ていたくて、遅くまで起きていることは時折あった。
 この村の夜は、風が木々を揺らす音、せせらぎ、虫の声しか聞こえない。
 誰かを憎み、憎まれて、などということもないのだ。
 ユートピアとかザナドゥのような場所が、まさか本当に存在するとは思わなかった。
 もしかして、私は死んでしまっていて、ここは天国なのかと思ったこともあるが、そうだとしたら、エリカがここに居ないのはおかしい。
 本気で野垂れ死にしたいと思ったあの日、私は確かにエリカの声を聞いた。
 そして、普段は滅多に村から出ないという夫婦に助けられ、今ここにいる。
 エリカが導いてくれたのだろうか?
 天国に一番近いこの場所へ。