「ただいま」
 家に帰ると、母はおかえりと答えたあと、
「学校には慣れた?」
 事務的に尋ねてくる。
「一応、慣れたけど…」
 そこは、言葉を濁しておいた。
「エリカちゃんの様子はどう?」
 せっかく言葉を濁したのに、いきなり核心を突いてくる母は意地が悪い。
「ん…まぁ、あのまんまだよ」
「やっぱりね。あの子は本当に母親似で、一族の恥なんだから。兄さんの見る目がなかったと言えばそれまでだけど…あら、おやつ食べないの?」
「いい、お腹空いてないし」
 そう言うと、私はさっさと自分の部屋に向かった。

 制服から部屋着に着替える時、私は姿見に映った自分を見て、すぐに目をそらした。
 ニキビの出来やすい浅黒い肌、チリチリの髪はきつくひっつめてあり、パッとしない顔だ。
 さっき、学校で見かけたエリカと血縁があるとはとても思えない。
 エリカはというと、童顔でアヒル口だが整った顔立ちで、身長は私と同じぐらいでも、グラビアアイドルのようなボディ、ずっと年上なのに、白く透明感のある肌。
 学校内でも、いつもお尻をフリフリさせながら歩き、陰口を叩かれようと、典型的なぶりっこをやめる気配などまるでない。