「ちー、まじでちっちゃくてかわいーよな」

「うっさいわバカはる!」

「そーゆーツンデレなとこも好き」

「ななな、なにを……っ!」

「あはは、あわててやんの~」

 ……これが、1年前までのあたしたちの毎朝のやりとり。

 あたし、小山千紘とバカはる――大野隆春は、家がお隣同士の幼なじみ。

 誕生日も1日違い……なんだけど、隆春が4月1日、あたしが4月2日で、学年は1つ隆春の方が上なの。

 だから隆春は、1年早く高校生になってしまった。

 あたしの憧れの高校に進学した隆春は、あたしがずっと入りたいと思っている弓道部に入部したんだ。

 隆春は高校のことをよく話してくれて、特に部活のことをいろいろ教えてくれる。

 的の前で引けるようになるまでが大変だってこと、夏休みの合宿に加えて春にも1泊2日の遠征があること、大会のこと。

 部内の行事の写真とかも、よく見せてくれて、部員がすっごく仲良しなことがよくわかる。

 楽しいんだけど……そのときについ、他の女の先輩のことも見てしまう。

 みんな大人っぽくて、背が高くてきれいな人ばっかりで。

 あたしがあと1日生まれるのが早ければ同じ学年だったのに、全然そうは見えないんだ。

 あたしは、子どもっぽいし背も低いし、隆春といるといつも口が悪くなって、思ってることと反対のことを言っちゃう。

 ……ホントは、好きなのに。

 あたしのことなんて、隆春はなんとも思ってない。

 素直になれないあたしの、自業自得だ。

 わかりきったことだけど、ときどき苦しくなる。

 おんなじ学年だったらもっと一緒にいられて、あたしたちの関係ももっと違ったのかな、なんて思ってしまうんだ。