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徳川嵐との決勝戦が行われる今日も、

俺はすずのそばにいた。


この3日間俺は片時もすずのそばを離れなかった。

すずが一生懸命まとめてくれた

徳川嵐の情報がぎっしり詰まっている

リングノートを読みながら、

すずに話しかけ、

すずの手を握り続けていた。


「すず、ごめんな。俺、これまですずには助けてもらってばっかで、お前に何にもしてやれてなかった。すずが目を覚ましたら、色んな所に連れて行ってやりたい。今まで俺がやりたい野球ばっかやってたから、今度はすずがやりたい事を一緒にやりたい。」

今日も俺の涙は止まらない。

この3日間、体から水分がなくなっちまうんじゃないかってほど泣いたが、それでも涙は止まらなかった。

朝の7時になって、

工藤監督と今日のスタメンメンバー8人が

すずの病室にやってきた。

「朝早くからすみません。」

そうすずのお母さんに謝る工藤監督の声が聞こえる。

俺は絶対にここから離れない。

そう決めていた。


みんなが俺を説得している。

「もし、、、もし俺がこの場を離れている間に、すずの心臓が止まったらどうする?!!!お前達はそれでも俺に試合に出ろって言うのか?!!」

そう泣き叫ぶ俺に、

誰も何も言えなくなった。


「それでも行きなさい!!!!」

そう叫んだのは、すずのお母さんだった。

「もしこのまますずが目覚めなかったとしても、すずの心臓が止まってしまったとしても、それでもあなたは今日の試合に絶対に行きなさい!!今のあなたの姿を見たら、すずが怒るわよ!!!」

そんなお母さんの声に俺の涙はもっと止まらなくなる。


「翔には野球がなきゃダメなの!どんな時でも野球を1番に考えて!きっとそう言うわ。」

すずのお母さんも、

俺に負けないくらい泣いていた。


「行きなさい。もしもすずが目を覚ました時には、きっと1番にあなたに会いにいくから。だからマウンドで待ってて。すずに甲子園に行くあなたを見せてあげて。すずを甲子園に連れて行ってくれるんでしょっ!そう約束したじゃないっ」

俺は手に持ったリングノートを握りしめる。

俺は本当にこのまま

すずの元を離れてもいいのだろうか。

後から後悔しないだろうか。

俺の心はまだ迷っていた。

俺はすずの頬に手を添える。

その時ふとリングノートを床に落としてしまった。

最後のページが開かれたリングノートを拾う。

拾おうとすると、何も書かれていない

と思っていた最後のページに

小さな字で何か書かれていた事に気がついた。


"翔!翔なら絶対に大丈夫!いつも通り楽しんで野球が出来たなら、あなたの球は誰にも打たれない!あなたの事を今まで1番近くで見ていた私が保証する!私はあなたの1番の応援者だよ!決勝戦、何が何でも勝って、甲子園に行こうね!すず"


そう書いてあった。

すず、、、

俺はすずを抱きしめる。

何で俺は、自分の気持ちに気付いた時点で、

すずに気持ちを伝えなかったんだろう。

親友だから、、、

すずに彼氏ができたから、、、 

何でそんなどうでもいい理由で、

自分の気持ちを伝えなかったんだろう。

聞こえてるかわからないし、

もう遅いかも知れない。

それでも俺はすずに伝えたかった。


「すず、、、好きだ。」


俺はそう言って強くすずを抱きしめた。