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『表洋学園vs斎王淑儀(さいおうしゅくぎ)』
6回が終わった時点で、0-0の同点。
俺は1人も塁に走者を出さず、
パーフェクトピッチングを続けていた。
_____そして迎えた7回の表
相手の攻撃。
俺は2アウトまで追い込んでいた。
そして相手の4番を迎える。
よしっ、ショートゴロに抑えた!
そう思ったが、振り向くと、
忍者と呼ばれる程守備の上手い颯太が
ボールをこぼしてしまっていた。
エラーが記録され、ランナーは一塁。
俺はこの日初めてランナーを許した。
「翔、ごめんっ」
申し訳なさそうに颯太が言いにくる。
「大丈夫!切り替えていこう!」
そうは言ったもののその後も、
ボテボテのゴロが
運悪くヒットになったり
バッテリーミスが出たり
気づいたら1点を取られていた。
俺はようやく三振でアウトをとり、
俺たちはベンチに戻る。
「お前ら!」
工藤監督がそう叫び、
俺たちは一斉に顔を上げる。
「野球には流れと言うものがある。今確実に流れは向こうのチームにある。まずは向こうに向いた流れを断つところからだ!こう言う時に絶対に落ち込んだりマイナスな気持ちになるな。俺たちなら出来る。自分をを信じて仲間を信じて、ただひたすらボールを追いかけろ!誰か1人が良いプレーをしたら、みんな必ずそいつに続いていく。そうすれば流れはこっちに向く。このピンチこそがチャンスだ!!!行ってこい!!!」
工藤監督が俺たちを送り出す。
いつも厳しい事しか言わない工藤監督が
俺たちなら出来ると言った。
俺たちなら本当にできる気がした。
7回の裏が始まる前に、
みんなで円陣を組んだ。
俺たちなら出来る。行くぞー!!!!!
打順は1番からだった。
1番はショートの颯太。
ホームランバッターではないが、
打率はチームで1番良い。
「いけー!!」
俺たちはとにかく必死に叫ぶ。
しかし一球目、相手のストレートを
颯太は高く打ち上げてしまい、
キャッチャーゴロ。
これで1アウトランナーなし。
続く2番、海斗。
海斗はいつも146キロの俺の球を受けているんだ。
きっと140キロ前後しか出ていないであろう
相手ピッチャーのストレート、
海斗なら絶対に打てる。
2ボールノーストライクからの3球目、
打った!!!!
みんなが固唾を飲んで、
ボールの軌道を追いかける。
あぁ〜。
観客からはそんな声が聞こえた。
後一歩のところで客席には届かず、
センターフライとなってしまった。
だめだ。
工藤監督が言った通り、
流れが完全に向こうにある。
そして2アウトのこの場面で俺の打席が回ってきた。
俺がこの流れを変えてやる!!
俺は何としてでも塁に出て、
後ろの村上に繋げなきゃいけない。
2ボール2ストライク。
俺は追い込まれていた。
でも諦めるわけにはいかない。
俺は絶対に塁に出るんだ。
今だ!
そう思って俺はバントをした。
バッテリーは多分、
フライを予想してあの球を投げてきた。
だから俺はあえてバントをした。
誰もがツーアウトのこの状態で、
俺がバントをするとは予想していなかっただろう。
ピッチャーもキャッチャーも
ボールを取りに行く足が一歩遅れた。
その隙に足の速い俺は、
全速力で一塁に飛び込む。
でも上を見上げると、
一塁手はボールを掴んでいた。
俺は審判を見る。
「、、、セーフっ!」
そう審判が叫ぶ。
よっしゃーーーーー!!!
ベンチに向かってガッツポーズをした。
誰よりも嬉しそうに喜んでいるすずの姿が見えた。
次のバッターは、4番、村上。
1年の頃ご飯が食べられず吐いていたあの村上だ。
今やチームの誰よりも大食いで体がデカい。
村上、お願いだ。
どんな形でも良い。
後ろに繋げてくれ。
2アウト1塁。
もし村上がアウトだったら、
この回は終わってしまう。
「村上!ツーアウトからが勝負だぞ!俺たちの粘り強さ、見せてやれ!!!」
そんな工藤監督の声が聞こえる。
村上は静かに頷いた。
大丈夫、村上ならやってくれる!
相手ピッチャーはこれまで、
初球は9割ストレートで来ていた。
ただ、初球はストレート
そうわかってはいても、
あの重い球をヒットにするのは難しい。
だからここまで俺たちは一点もとれなかった。
でも体のでかい村上なら、
上手くバットがボールに当たれば、
ヒットにできるはずだ。
1球目、やっぱり相手バッテリーは
ストレートを選んだ。
村上、頼むぞっ。
きっと俺たちのチーム全員が
そう心の中で祈っていただろう。
村上は思いっきりスイングをする。
当たった!!行け!!!伸びてくれ!!!
ボールは、俺たちの思いを乗せるかのように
高く、そして遠くに飛んでいった。
「は、入った。」
勝ち越しのホームラン!!!!
これで逆転だっ!!!!!
俺はホームまで走りながら、
1年の時に工藤監督に怒られて
泣きながら飯を食べていた村上を思い出した。
村上、頑張ってよかったな。
そんな思いでベンチに戻って村上と抱き合った。
そのあとは工藤監督が言っていたように、
流れはこっちに向いていた。
まるで神が応援するチームを変えたかのように
運も重なり、また2点返すことができた。
表洋学園 4-1 斎王淑儀
俺たちは見事準決勝を制し、
県大会決勝に駒を進めることができた。
『表洋学園vs斎王淑儀(さいおうしゅくぎ)』
6回が終わった時点で、0-0の同点。
俺は1人も塁に走者を出さず、
パーフェクトピッチングを続けていた。
_____そして迎えた7回の表
相手の攻撃。
俺は2アウトまで追い込んでいた。
そして相手の4番を迎える。
よしっ、ショートゴロに抑えた!
そう思ったが、振り向くと、
忍者と呼ばれる程守備の上手い颯太が
ボールをこぼしてしまっていた。
エラーが記録され、ランナーは一塁。
俺はこの日初めてランナーを許した。
「翔、ごめんっ」
申し訳なさそうに颯太が言いにくる。
「大丈夫!切り替えていこう!」
そうは言ったもののその後も、
ボテボテのゴロが
運悪くヒットになったり
バッテリーミスが出たり
気づいたら1点を取られていた。
俺はようやく三振でアウトをとり、
俺たちはベンチに戻る。
「お前ら!」
工藤監督がそう叫び、
俺たちは一斉に顔を上げる。
「野球には流れと言うものがある。今確実に流れは向こうのチームにある。まずは向こうに向いた流れを断つところからだ!こう言う時に絶対に落ち込んだりマイナスな気持ちになるな。俺たちなら出来る。自分をを信じて仲間を信じて、ただひたすらボールを追いかけろ!誰か1人が良いプレーをしたら、みんな必ずそいつに続いていく。そうすれば流れはこっちに向く。このピンチこそがチャンスだ!!!行ってこい!!!」
工藤監督が俺たちを送り出す。
いつも厳しい事しか言わない工藤監督が
俺たちなら出来ると言った。
俺たちなら本当にできる気がした。
7回の裏が始まる前に、
みんなで円陣を組んだ。
俺たちなら出来る。行くぞー!!!!!
打順は1番からだった。
1番はショートの颯太。
ホームランバッターではないが、
打率はチームで1番良い。
「いけー!!」
俺たちはとにかく必死に叫ぶ。
しかし一球目、相手のストレートを
颯太は高く打ち上げてしまい、
キャッチャーゴロ。
これで1アウトランナーなし。
続く2番、海斗。
海斗はいつも146キロの俺の球を受けているんだ。
きっと140キロ前後しか出ていないであろう
相手ピッチャーのストレート、
海斗なら絶対に打てる。
2ボールノーストライクからの3球目、
打った!!!!
みんなが固唾を飲んで、
ボールの軌道を追いかける。
あぁ〜。
観客からはそんな声が聞こえた。
後一歩のところで客席には届かず、
センターフライとなってしまった。
だめだ。
工藤監督が言った通り、
流れが完全に向こうにある。
そして2アウトのこの場面で俺の打席が回ってきた。
俺がこの流れを変えてやる!!
俺は何としてでも塁に出て、
後ろの村上に繋げなきゃいけない。
2ボール2ストライク。
俺は追い込まれていた。
でも諦めるわけにはいかない。
俺は絶対に塁に出るんだ。
今だ!
そう思って俺はバントをした。
バッテリーは多分、
フライを予想してあの球を投げてきた。
だから俺はあえてバントをした。
誰もがツーアウトのこの状態で、
俺がバントをするとは予想していなかっただろう。
ピッチャーもキャッチャーも
ボールを取りに行く足が一歩遅れた。
その隙に足の速い俺は、
全速力で一塁に飛び込む。
でも上を見上げると、
一塁手はボールを掴んでいた。
俺は審判を見る。
「、、、セーフっ!」
そう審判が叫ぶ。
よっしゃーーーーー!!!
ベンチに向かってガッツポーズをした。
誰よりも嬉しそうに喜んでいるすずの姿が見えた。
次のバッターは、4番、村上。
1年の頃ご飯が食べられず吐いていたあの村上だ。
今やチームの誰よりも大食いで体がデカい。
村上、お願いだ。
どんな形でも良い。
後ろに繋げてくれ。
2アウト1塁。
もし村上がアウトだったら、
この回は終わってしまう。
「村上!ツーアウトからが勝負だぞ!俺たちの粘り強さ、見せてやれ!!!」
そんな工藤監督の声が聞こえる。
村上は静かに頷いた。
大丈夫、村上ならやってくれる!
相手ピッチャーはこれまで、
初球は9割ストレートで来ていた。
ただ、初球はストレート
そうわかってはいても、
あの重い球をヒットにするのは難しい。
だからここまで俺たちは一点もとれなかった。
でも体のでかい村上なら、
上手くバットがボールに当たれば、
ヒットにできるはずだ。
1球目、やっぱり相手バッテリーは
ストレートを選んだ。
村上、頼むぞっ。
きっと俺たちのチーム全員が
そう心の中で祈っていただろう。
村上は思いっきりスイングをする。
当たった!!行け!!!伸びてくれ!!!
ボールは、俺たちの思いを乗せるかのように
高く、そして遠くに飛んでいった。
「は、入った。」
勝ち越しのホームラン!!!!
これで逆転だっ!!!!!
俺はホームまで走りながら、
1年の時に工藤監督に怒られて
泣きながら飯を食べていた村上を思い出した。
村上、頑張ってよかったな。
そんな思いでベンチに戻って村上と抱き合った。
そのあとは工藤監督が言っていたように、
流れはこっちに向いていた。
まるで神が応援するチームを変えたかのように
運も重なり、また2点返すことができた。
表洋学園 4-1 斎王淑儀
俺たちは見事準決勝を制し、
県大会決勝に駒を進めることができた。

