俺の名前は本宮翔。

表洋学院1年、野球部所属。

特技は野球で趣味も野球。


自己紹介をしろと言われても、

このくらいしか言うことがない。

5歳の頃から高校1年の今まで、

俺は野球しかやって来なかった。

勉強はもちろん、

放課後友達と遊ぶ事も、 

恋愛すら興味はない。

頭の中は常に野球の事だけを考えている。

いつかプロに入って

一生野球に携わる仕事がしたい、

そう思っている。



あの悪夢の甲子園地区予選決勝の日から

半年が過ぎようとしていた。


「翔、おっはよ〜」


朝練が休みだった今日は、

眠い目をこすりながら、

寮から直接教室に向かう。

その道中、同じクラスで野球部マネージャーの 

高原すずに会った。

「おう、おはよ。お前は今日も朝から元気だな〜」

俺がそう言うと、

「ほら、翔も元気だしなよ!」

そう言ってすずは俺の背中をバシッと叩いた。

「いてっ!お前力つえーんだよ、細いくせに。」

そう言うと、すずは痛がる俺を指差して

大笑いながら先に教室に入って行った。


あの野郎、、、。

すずとは、中学の頃からの友達だ。

いつも明るくて本当に良いやつで

1番仲が良い女友達。

同じ中学からこの高校に入ったやつは、

俺以外に2人いた。


1人目が高原すずで

2人目が松村海斗(まつむらかいと)。


海斗は同じ野球部のキャッチャーだ。


俺たちは中学時代からバッテリーを組んでいて

その頃から、中学卒業したら絶対に2人で

表洋学院入って甲子園に行こうな!

そう約束していた。


海斗はこの学校からスポーツ推薦は貰えなかったが、

あいつは野球だけじゃなくて勉強も出来るから、

一般受験で難なく受かりこの高校に一緒に入学した。

「翔、お前この前俺が貸した古典のノート返せよ、

俺のクラス今から古典なんだけど」

後ろから海斗の声がした。

海斗の家は学校からギリギリ通える範囲内なので、

寮ではなく家から通っている。


「あーごめん、はいこれ。

まじありがと。今度ジュース奢る。」

そう言うと、

「ノート写せた?

お前2週間後の期末テスト大丈夫そーなの?」

そう俺を心配する海斗に俺は自信満々に言う。

「写せなかったけど大丈夫!

いつも通り徹夜漬けで

俺は赤点を回避してみせる!」

「は?!!おま、いつもそう言って

全教科赤点じゃねーか!

まじで進級だけはしてくれよな、、、。

ほんと、せっかく俺が自分の勉強後回しにして

ノート貸してやったのに

写してねーとかありえねーだろ!

てかそもそも授業で寝るなよな!」

「いやーまじでごめん。

写そうと思ってノート開いた所までは

覚えてんだけど気づいたら、

机の上で朝を迎えてたわ!」

俺たちはそんな会話をしながら、

それぞれの教室に入って行く。

「じゃあまた練習でな!」