リングノート〜必ず君を甲子園に連れて行く〜

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以前よりだいぶ足が良くなってきたので、

俺は今日から練習に参加することにした。

怪我がバレてから今日まで、

みんなとは完全に違うメニューしていたので

久しぶりにみんなと一緒に練習をする。

早く通常メニューの練習に戻って、

もっといい球を投げられるようにならないと、

俺はそんな気持ちでいた。

「翔!キャッチボールしようぜ。」

そんな俺に声をかけてくれたのは南雲先輩だった。

新しい1年達も一緒に練習をしていたが、

馴染みある2.3年の顔ぶれを見て、

俺はなぜだかホッとした気持ちになった。

半分以上の3年生達は夏の県大会が

終わった時点で引退していったが、

南雲先輩や大学で野球を続ける先輩達は、

まだ練習に参加していた。


「南雲先輩、お疲れ様っす。」

「やっと足良くなったみたいで良かったな。」

「よくはなってきてますけど、まだ完治には程遠いです。思ったよりも時間かかってて、、、夏は先輩達の力になれず、本当に悔しかったです。自分の不注意で怪我をしてしまってすみませんでした。」

そういう俺に南雲先輩は言う。

「野球に怪我はつきものだからな。仕方ないよ。俺も怪我をした経験はあるからお前が焦る気持ちはよくわかる。お前も相当落ち込んでたらしいな。でも怪我したからこそ良かったと思う事はなかったか?」

「え?怪我して良かったと思った事?」

そんなことあるか?そう思っていると、

「俺は1年の時に初めて大きい怪我をして、しばらくの間お前みたいに練習にも試合にも参加できなかった。でもその時、練習できる事がどれだけありがたい事かに気づけたんだ。俺は怪我してる間とにかくその時できるトレーニングを続けて、怪我が治ってからも誰よりも長い時間練習をした。そのおかげで今がある。怪我前の俺は、プロの話が来るどころか、ベンチ入りもしてなかったんだ。」

そうだったのか、、、

「俺が言いたいのは、怪我をしたから今の俺がある。起きた出来事に良い悪いなんてないんだ。自分がその出来事をどう捉えるかで未来が変わる。お前も、怪我したからってずっと落ち込んでるんじゃなくてよ、今できることを焦らずやればいんじゃねーの。人生に無駄なことなんてないと思うし、俺たちまだ若いんだからよ。」

俺は本当にガキだな。

年齢は1つしか違わないはずなのに、

南雲先輩は考え方が本当に大人だ。

プロに行けるのはこういう人だ。

俺も焦らずに今できることをやろう。

それからの俺は、極力足を休めて、

今できるトレーニングを必死にやった。