夏の甲子園地区予選決勝。


2-1で迎えた9回裏。


俺たち表洋(ひょうよう)学院は、

冬徳嵐(とうとくあらし)高校に

1点リードで勝っていた。


しかし3年生のエースピッチャーの牧村先輩が

投げる時に足首を捻ってしまった。

牧村先輩は、悔しそうに

涙を堪えながらマウンドを降りる。


もう1人のエースピッチャーである

2年生の南雲先輩も一昨日の準決勝、

ピッチャー返しで突然の怪我。

今日はベンチ入りしていなかった。


そうして、当初は予定していなかった

3番手で1年生の俺がマウンドに上がった。


2アウト1塁。

あと1つアウトを取れば、

俺たちは甲子園に行ける。

お世話になった3年生達を

絶対に甲子園に連れて行きたい。


1球目。俺は最速145キロの

渾身のストレートを投げた。


しまった!そう思った時には遅かった。

相手チームの4番は、

力んで高めに浮いてしまったボールを

見逃す事なくしっかりと捉えた。


!!!わぁぁぁぁぁぁぁあ!!!


ボールがバックスクリーンに当たるよりも先に

観客達の歓声が聞こえた。


俺は1球目にしてホームランを打たれ、

表洋学院は3-2でサヨナラ負けをした。


こうして3年生の先輩達の最後の夏は、

1年生の俺のせいであっけなく終わった。