「久しぶりだね、オティリエ」

「ええ。お兄様も、お元気そうでなによりです」


 アルドリッヒに会うのは神殿の件が片付いて以来はじめてだ。あれから何度か手紙のやりとりをしていたものの、なんだか懐かしい気持ちになってしまう。


「でも、どうしてお兄様がこちらに?」

「婚約が決まったお祝いを……おめでとうと直接伝えたかったんだ。明日はきっと、ひっきりなしに貴族たちがやってきて、ゆっくりと話をする時間がとれないだろうからね。殿下がこうして機会を作ってくださったんだよ」


 ポンポンと頭を撫でられ、オティリエは思わず泣きそうになる。


「そうだったんですね。お兄様……ありがとうございます」

「うん。本当におめでとう、オティリエ。……それとね、僕ともう一人、オティリエにお祝いを言いに来た人がいるんだ」


 アルドリッヒが扉のほうをチラリと見る。……が、誰もいない。首を傾げるオティリエだったが、ややしてかすかな足音が聞こえてきた。


「え……?」


 現れたもう一人の来訪者の姿を見た途端、オティリエは思わず声を上げる。


「……久しぶりだな、オティリエ」


 そこにいたのはオティリエの父親――アインホルン侯爵だった。