「よし、完成!」


 招待状の最後の一枚を見つめつつ、オティリエは満面の笑みを浮かべる。打ち合わせの合間をぬって書き続けていたため、腕が腱鞘炎気味だしインクまみれだ。とはいえ、ひと仕事を終えた達成感は大きく、オティリエは清々しい気持ちになる。


「ありがとう、オティリエ。本当にお疲れ様」

「妃殿下! とんでもないことでございます。私のほうこそお待たせしてすみませんでした」


 書き上がった招待状をまとめて渡し、オティリエは王妃に頭を下げた。


「そんなことないわ。一枚一枚丁寧に仕上げてもらえて本当に嬉しい。だけど、残念ね。明日にはあなたをヴァーリックに返さなきゃならないなんて……」


 王妃はそう言ってため息をつく。

 オティリエが頼まれたのは招待客のリストアップとお茶会の段取り、それから招待状を書き上げることまでだ。当日のセッティング等、あとのことは王妃の補佐官たちが手配をしてくれるのだという。このため、オティリエはようやく本務であるヴァーリックの補佐官に戻れるのだが。