「えっと……二人は今、なにをしているんだい?」

「え? と、手を握っています?」


 どうしてそんなことを尋ねるのだろう? オティリエがこたえると、ヴァーリックがムッと唇を尖らせる。ついで脳内に補佐官たちの笑い声が聞こえてきた。


【オティリエさん、それだけじゃ情報が足りない!】

【もう少し! もう少し詳細を伝えてあげて!】

(詳細……詳細?)


 どうして補佐官たちは笑っているのだろう? どうしてヴァーリックは少し不機嫌なのだろう? 心読みの能力を弾かれているらしく、あれ以降ヴァーリックの心の声はちっとも聞こえてこない。
 混乱しているオティリエの肩をヴァーリックはそっと叩いた。


「オティリエ、彼には婚約者がいるんだ。手を握るのはやめておきなさい」

「え? そ、それは知ってます。だけど……」

「ほら、もうおしまい」


 彼はそう言ってオティリエの両手を補佐官から引き離す。その途端、またもや補佐官たちの笑い声が聞こえてきた。