発売日に買いにいけないまま売り切れた傑作だ。
 もしもシュゼットが手に入れて渡せたら、彼女は飛び上がって喜んでくれるに違いない。

 店頭にはないというが、シュゼットはあるかもしれない場所を知っていた。
 いわゆる穴場だ。

 そこなら、手付かずのダーエの新刊が保管されている可能性が高い。
 新刊を手に入れるには、まずはそこに出向かなければならない。

(とはいえ、私は王妃です。外出するとなると大がかりになりますし、正当な理由も必要です)

 どうにかして、メグや周囲の者に知られずに出かけられないだろうか。
 一計をめぐらせたシュゼットは、メグに耳打ちした。

「屋根裏部屋から持ってきたおさがり品はどこにありますか?」
「王妃様がリメイクされた洋服のことでしたら、支度部屋の奥にしまってありますけど……」

 どうしてそんなことを聞くのだろうと不審げなメグに、シュゼットは穏やかに笑いかけた。

「久しぶりに、彼らとお話してみたいと思っただけです」